梅に鶯 ~新選組と私に刀~
【徳川悠真】




父 徳川家定は、私に料理を教えてくれた

朝比奈は、武術を教えてくれた

母 志賀は私を救おうとしてくれた



父を殺したのは、母だったそうだ



長年の苦しみから、解放させたかったのね











父と同じく徳川という名に

苦しみを感じ始めた
幼い私を解放しようとした





あの日


桂小五郎に助けられたのは

私ではなかった


我が子を殺めずにすんで良かった

すまなかったと、母は泣いた


それから、母には会っていない



だから、父を殺め


母が苦しんでいるのではと、心配になる










芹沢さんは、私の作った浪士組で


尽忠報国を成すと、扇に記してくれた


そのすべてを一人で背負った


あの扇の重さよりも、はるかに重い

責任に負けた


私と芹沢さんは、よく似ていた


不安を紛らわす為、酒を飲み暴れた

私は、生きる為、暴力を受け入れた




早く苦しみから、解放されるよう

燃える家の屋根上へ

雪の降る丘へ






誰でもいいから……





私を解放して





苦しい





苦しいよ













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