Four you ～２＋２＝４＝２×２～
これが、私のデビュー作「ファントム」の概要だ。

実は、この小説の主人公にはモデルがいる。

私だ。

杏樹と私が違うのは、杏樹は黒幕を知っていること、杏樹の方には剣斗という人物がいたこと、杏樹は息を引き取ったこと。これくらいだ。

中学生の頃、私はひたすら地味だった。

それゆえに小説を書こうと思ったのかもしれないが、中学生の私はとにかく読書好きで、休み時間も誰とも話さずに読書をしていた。読書量ばかりが増え、友達は一人も増えなかった。

そして、そんな私は、杏樹と同じように、クラスメート達のサンドバッグに選ばれた。

傷跡なんてたいてい消えた。だけど、いくつかは残っていた。

幸いなことに、服を着れば隠れる場所だった。でも強めに触ると、あの頃の痛みが蘇る。

…私がこの高校に来て、人気者になりたいと思った理由も、もう分かるだろう。

私はクラスの影だったから、あんな目に遭った。もうあんな目に遭うのは、何があっても避けなきゃいけない。だから、私は何としても、人気者になる必要があった。

「これ、最後まで読んだら泣いちゃってさ…」
「詩音、最後って、結局どうなったの？」

そんな感想や質問は、サイトにもたくさん寄せられた。私はそれを見るたびに、分かってないと哀しくなりながら、しかしそれを表には出さずに、読者一同に返事をしたためるのだった。

幸いなことに、人気者になるという確証はないものの、クラスの影となる心配はなかった。

小説家としての私を名乗った時のどよめきを、私は忘れないだろう。

…この後起こることが、これから先の私の人生で、どれだけ色あせずに残ったとしても。
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