押しかけ社員になります!

木曜の朝、私はそれのみの用で部長のデスクに向かい、『レポート』を出す事にした。


「部長、おはようございます」

同時にデスクに置いた。

「ああ、おはよう。…これは?早速検印か?」

今日も変わらず、格好いい。…好きです。……大好きです。

「いいえ違います…レポートです。目を通して頂きたいです。どうしても」

「…解った。預かろう」

「よろしくお願いします」

頭を下げた。ふぅ。緊張したぁ。

受け取ってくれたのは私の顔を見たからだ。私の堅い、不安そうな表情…隠しても、隠しきれない私の顔つきに、何かを感じ取ったから。ですよね。
困った人間だ。こんな事では…もっと大人にならなければ。人間らしいと言えば人間らしいのでしょうが。…感情のままと言えば、そのものだ。子供っぽいなぁ。
…あぁ、…私、部長の前だけかも知れない。

私、やっぱり甘えてるんだ。やっぱり自惚れてるんだ。部長に好きになって貰えたから。
だって、他の人にはきちんとした人だって思われる行動をしているんだもの。ずっとちゃんと出来ているんだもの。

フニャフニャしてるからだ。心が部長に浮ついているからだ。しっかりしろ、って、とっくに部長に釘をさされていたじゃないの。
仕事は仕事脳。部長には部長脳?
冷静な恋愛なんて無い。夢中になる時はとことん夢中になればいいのよ。


「西野!」

あ…。

「は、い」

「ちょっと来い…」

意外…。呼ばれるなんて思わなかった…。
『…おい、久し振りなんじゃないのか、あの呼び出し、…相当来てるな。…恐そう』そんな声が聞こえて来そうだった。
私も、今日は恐い。
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