愛を有する者
「その時の私はまだ幼くて、そういうことが分からなかったの。どこかで聞いたことがある名前だな〜ってぐらいで。」

『ところで、お前は何か俺に用事があるんじゃないのか?』

「私は特に何も考えないで話かけてしまったものだから、凄く焦ってしまって。
つい、目の前にあった、手鏡を二つつかんで」

『どちらがいいと思いますか?
私、優柔不断で迷ってて。』

『悩んでいるならどちらも大して欲しくはないのではないか?』

愛架さんは、その時はさらに焦ったと言っていたっけ。

『そうなんですかね?でも手鏡は欲しくて…』

『だったら、この手鏡にしてはどうだ?』

そう言って、信長様は愛架さんに現代でいう、ピンク色の手鏡を手渡したそうだ。

『これの方がお前に似合うと思うが。』

「その手鏡は凄く綺麗で可愛くて。
一目惚れした信長様に、これが似合うと言われて嬉しかったの。」

その日から、信長様と愛架さんは会うようになったらしい。

要するに2人が知り合ったきっかけの、大切な物。
< 46 / 74 >

この作品をシェア

pagetop