その背中、抱きしめて 【上】



「高遠くんだっけ?常識ある子だね」


お母さんが口を開いた。


「昨日の晩、お姉ちゃんから柚香にカッコいい彼氏ができたみたいだって聞いた時は心配だった。今まで男っ気が全然なかったのに、いきなりイケメンの彼氏が出来たなんて、柚香は舞い上がってて盲目になってるだけで遊ばれてるんじゃないかと思って」

心配そうなお母さんの顔。

「まだ男の子と付き合うのも柚香には早いんじゃないかとも思った。けど、さっき高遠くんが暗くならないうちに、夕飯前に柚香を家まで送り届けてくれて、ちゃんと立派に挨拶もしてくれた。真剣に付き合ってるとも言ってた。この子なら安心だと思ったよ」


だから、遊びに来てって言ったんだ…。


「そのかわり、勉強も部活も疎かにしないこと。お母さんと約束して」

「わかった。勉強も部活も今まで以上に頑張るよ。勉強は高遠くんが教えてくれるから問題ないし」


ドヤ顔でガッツポーズする。


「は?高遠くん1年生なのに勉強教えてもらってるってどういうこと?あなた上級生でしょ?」

「でも高遠くん学年1位なんだよ。実は1学期の中間から高遠くんに勉強を教えてもらってて、それで去年より成績上がったんだよ」


へぇ、とお母さんが驚く。


「部活やってて学年1位ってすごいね。やっぱり賢い子なんだ。…それにしても後輩に勉強教えてもらうのは恥ずかしいもんだけどね」

驚きからの呆れ顔。


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