その背中、抱きしめて 【上】



「いやー、なんか私頑張った!」

たった2時間ちょっとだけど、かなり集中して勉強できた。

「なんか柚香先輩、前に会った時と感じが違うね。こっちが本物なのかな」


違う?

高遠くんの前だと緊張するから、それで感じが違ったのかな。

それに高遠くん家だったから余計緊張してたのかも。


カウンターで飲み物を受け取って席に着いた。

「翔、捻挫で戦線離脱してるんだってね」

おもむろに高遠くんの話題を振られて、少しドキッとした。

今の私にはちょっと刺激が強い話題。

「もしかして、翔と喧嘩してる?」

「え、何で?」

敬語がなくなっていても全然気にならないのは、人なつっこい人柄のせいかな。

むしろタメ口が心地いい。


「この間、ご機嫌うかがいで翔に電話した時に捻挫の事知ったんだけど、柚香先輩の話を避けてたっていうか…こっちから話振ったらあからさまに嫌がったから、何かあったんだろうなって思って」

「…そっか…私の話、嫌がったんだ…」


ズキン。

胸が痛んだ。

心が痛かった。


そこまで嫌われちゃったかぁ…。


「あ、柚香先輩ごめん。傷つけるつもりなかったんだ」

清水くんが慌ててフォローを入れてくれた。


「気にしないで。清水くんは悪くないよ。嫌がられてるだろうなーって思ってたから大丈夫だよ!」


嘘。

そこまで嫌われてるとは思ってなかった。

今は辛いけど、ほとぼりが冷めればもしかしたらまた…って期待してる自分もいた。


けど、それはもう無理ってことだよね。



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