その背中、抱きしめて 【上】
高遠くんが私から視線を外して前を向く。
(やっぱ重たいよね、年上なのに)
どうしよう、機嫌悪くなっちゃったかも…。
「あんまり可愛いこと言わないでくれる?」
思いがけない言葉に上を向くと、高遠くんは目線だけ私の方に落としたあと、少し寂しそうに
「俺だって年下なんて嫌だよ。俺が1コ下をガキだと思うように、先輩から見たって俺なんてガキだし。せめて同い年がよかった」
ってまた前を向いて言った。
「子供っぽいなんて思ったことないよ!むしろ高遠くんはしっかりしすぎてるから同い年か年上かと思うくらいだよ。だからつい高遠くんに甘えちゃって、私の方がよっぽど子供っぽいよ。」
いつも高遠くんに助けられてる。
年上なんだからしっかりしなきゃって思うのに、実際はいつもワタワタして…高遠くんに守られてる。
「甘えてないじゃん。先輩は1人で頑張りすぎ。もっと頼ってよ、甘えてよ。先輩のわがまま聞かせてよ」
そう言う高遠くんの横顔はちょっと怒ってるような、ふてくされてるような、でもその言葉は優しさがいっぱいで…胸が熱くなった。
だから高遠くんの腕にしがみつく。
嬉しくて、愛しくて。
「先輩?どしたの、急に」
「甘えてんの」
そっか。
私が気張らなきゃいいんだ。
簡単なことだった。
年上だから、とか思わないで素直に甘えればいいんだ。
そしたら、この笑顔が見れるんだ。
この笑顔、独り占めできるんだ。