モテ系同期と偽装恋愛!?

まだ、やるの……?

大会議室には休憩しに来たのであって、特訓しにきた訳じゃない。

それなのに、お菓子と飲み物を置いて、桃ちゃんとのお喋りを楽しもうと思ったら、彼が後からやってきて、急遽、練習時間となってしまったのだ。

頑張って男性恐怖症を治したい気持ちはあっても、休憩時間も楽しみたい。

「遼介くん、この後打ち合わせだよね? もう行った方が……」

出て行ってほしいという気持ちを別の言葉に変換して伝えたら、大丈夫と言われてしまった。

「まだ10分もあるから、俺のことは心配しないで。それより心の用意はいい? 抱きしめるよ?」

「ま、待って……」

私との距離を半歩詰めた彼は、待ってほしいという願いを聞いてくれず、私の背中に両腕を回そうとしていた。

心の準備がまだできていない私には、恐怖心を抑えることができず、咄嗟に彼の胸を強く押して突き放してしまった。

「紗姫〜、まだ指先も触れていないのに〜」

「ごめん……でも、これは難しいよ」

抱きしめられるという行為は、体幹を拘束されているようなものだから、私の中で難易度がかなり高い。

両腕ではなく、片腕で抱き寄せられるというなら、逃げ道がある分、恐怖のレベルが下がりそうな気もするが。

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