モテ系同期と偽装恋愛!?
そんな説明をすると、腕組みした彼はなにかを考え込み、その後にパチンと指を鳴らした。
「逆にしよう。紗姫が俺を抱きしめて」
「私が?」
「そう。俺は動かないから。それならいつでも逃げられるし、できるはずだよね。ただし最低1分は続けてね」
私が遼介くんを抱きしめる……触れ合う面積は同じでも、拘束されていない分、確かに気持ちは楽な気がする。
やってみようかな……。
遼介くんはズボンのポケットに両手を入れた姿勢で動かずに立っていてくれて、私は意を決して腕を広げ、そろそろと彼に近づいてみた。
しかし……後3センチのところで心身の緊張が強まり、これ以上動けなくなる。
広げた腕は宙に止まったまま。
たった3センチなのにと自分でも思うけれど、薄い透明な壁でもあるかのように、どうにも触れることができないのだ。
「ここで無理と言われたら、俺、傷つくんだけど……」
私の罪悪感を刺激するような台詞も、吐息と共に耳を掠めては逆効果。
「ひゃっ!」と叫んだ私は飛び退くように後ずさってしまい、ミッションをクリアすることができなかった。
「あ……ごめんね……」
2メートル離れた位置で謝ってみたが、肩を落とした彼が背を向けてしゃがみ込んでしまった。