モテ系同期と偽装恋愛!?

私の存在に気付かれる前に、隠れることができたのはよかった。

深呼吸して焦りの波が引き、鼓動も落ち着いてきた……と思ったら、またすぐに跳ね上がる。

隠れているこの柱の、裏側までいかない場所から、ふたりの話し声が聞こえるからだ。

恐る恐る横を見ると、柱に背を持たれるようにして立つ平田さんのコートの端が見え、向かい合って立つ遼介くんの片腕とビジネスバッグ、黒い革靴も片方が見えた。

ふたりは私より改札側にいるので、気付かれずに逃げるなら、また雨の中を出て行かなければならない。

しかし映画館に行くつもりの私は、これから電車に乗らなければいけないし、どうしよう……。

映画を諦めて帰るべきか、それとも遼介くんたちがいなくなるのを、ここで待つべきか。

それを決めかねている間、ふたりの会話を立ち聞きしてしまう状況に陥っていた。

「遼介先輩の傘に入れてもらえて、助かっちゃいました。お礼にこの後、食事に行きませんか? 私がご馳走します」

「傘くらいで後輩におごってもらうわけにいかないよ。ありがとう、気持ちだけもらっておく」

デートかと思ったが、どうやら違うみたい。

たまたま帰りが一緒で、平田さんが傘を持っていなかったという話みたい。

でも、彼女が遼介くんを狙っているのは誰が見ても明らかなので、もしかすると作戦かもしれないと勘繰ってしまった。

< 244 / 265 >

この作品をシェア

pagetop