モテ系同期と偽装恋愛!?
恐怖に微かに体が震え始めた時、彼の右手が動くのを見てしまった。
それは単にテーブル上に置かれていた手が、彼の太ももの上に移動しただけなのだが、捕まえられると勘違いした私は叫ぶように言ってしまった。
「分かったわよ! 飲みにでも、どこにでも行くから……」
だから、お願い……もう許して……。
とにかくこの場の恐怖から逃げたい一心で、承諾してしまった。
すると私を閉じ込めていた長い足が外され、横山くんはテーブルの向こう側にピョンと飛び降りた。
「やった!」と満面の笑みを浮かべ、「絶対だぞ」と念を押してくる。
再び開いた私たちの距離に恐怖の波が引いた後は、承諾してしまったことにやっと焦り始めた。
横山くんと飲みに……それも、ふたりでなんて……。
女性に困ることのない彼でも、酔った勢いで強引に迫ってくるかもしれない。
どこかに連れ込まれでもしたら、恐怖を通り越して、心臓が止まってしまいそう。
慌てて「やっぱり行かない」と言い直すと、それまで嬉しそうだった彼の眉間に、急に深いシワが刻まれた。
左手はズボンのポケットに突っ込み、右手はバンと机を叩いて凄んでくる。
「契約破棄はペナルティが発生するぞ。
いいのか?」