モテ系同期と偽装恋愛!?
ショルダーバッグを胸に抱きしめるようにして震える私を、横山くんは戸惑っているような困っているような……そんな顔で見つめていた。
それから彼は、恐る恐る聞いてくる。
「高所恐怖症じゃなくて……男性恐怖症なのか……?」
言い当てられてギクリとした。
横山くんの勘が鋭い訳じゃなく、あんなに明らさまに怯えては、気づかれるのも当たり前かもしれない。
それでも、この期に及んで、なんとか誤魔化そうと考えてしまう。
「ち、違うわよ。この私が、男性なんかを怖がる訳ないでしょう……」
高飛車女を演じることは、身を守る手段。
この方法で男性からのアプローチは激減し、女子社員からも男性を見下すカッコイイ女性として一目置かれてきた。
そのイメージが崩れてしまったら……。
気の弱いただの弱虫だとバレてしまえば、きっと男性からの強引な誘いが増えてしまうことだろう。
そうすると、たちまち女性社員から敵認定され、学生時代のような辛い過去に逆戻り。恐怖と悲しみの毎日を過ごさなければならなくなってしまう……。
横山くんと2メートルほどの距離を開けて、向かい合わせに立っていた。
男性恐怖症を否定したのに、彼はまだ怪しむような目で私を見ている。
半歩近づいてきたので、私も半歩後ずさる。
すると「ほら、やっぱり怖がっているじゃないか」と追い打ちをかけられてしまった。
「違うと言っているでしょう。
これは……」
「これは、なんだよ。
どうして俺が近づくと逃げるんだよ」
「こ、これは……嫌、だから……。
逃げるのも震えるのも全部、横山くんが嫌いだから……」