モテ系同期と偽装恋愛!?
「まだ気にしてるの? 遼介のこと」
「うん……」
桃ちゃんには、遊園地デートの全てを話してある。
私を楽しませようと気遣ってくれた彼を、傷つけてしまったことも……。
「大丈夫。遼介のことだから、またすぐに彼女ができて、紗姫に構っていられなくなるでしょ。大体、無理やりデートの流れに持ち込んだアイツが悪い」
「そうかな……」
「あ、そうだ。遼介、昨日帰ってきて、今日は朝から普通に出社だって」
「えっ……」
驚いてしまったのは、まだ中国に出張中だと思っていたから。
今日は木曜で、明日まで出張予定のはずだったのに、早く商談がまとまったから帰ってきたということか……。
さすが横山くんだと感心すると共に、急にソワソワと落ち着かない気持ちになる。
どんな顔して会えばいいのだろう……。
いつものように「おはよう」と声をかけていいのか……あ、私から挨拶するのはいつものことじゃなかった。高飛車女のイメージを崩さないように気を付けないと……。
心の声を口に出してはいないのに、目に見えてうろたえてしまったせいか、桃ちゃんに気持ちをさとられてしまったみたい。
「紗姫、そんなに悩まなくてもいいから。普通にしてなよ」
「う、うん、そうだよね。横山くん、もう来ているかな……私、先に行ってるね」
トイレのドアに手をかける私。
その背後で桃ちゃんの呟きが聞こえる。
「うーん、紗姫の心に深く入り込んだということは、ある意味デートは成功なのか……」
なにやら意味深なことを言われた気もするが、その言葉は私に浸透しない。
頭の中は横山くんでいっぱいで、他に気を回している余裕がなかった。