モテ系同期と偽装恋愛!?
トイレから出て、ライフサイエンス事業部に入ると、すぐに横山くんの席に目を向けてしまう。
始業までは15分余裕があるし、まだ来ていないみたい……。
気になるので久しぶりの彼の顔を早く見たいと思うような、逆に気まずいのでこのままずっと会いたくないような……そんな複雑な気持ちを抱えて自分の席に向かう。
着席すると隣の席の入社2年目の男性社員が「紗姫さん、おはようございます」と挨拶してきた。
「おはよう」と答えながら、落ち着かない気持ちを隠し、強気な目を後輩男子に向ける。
すると彼の頬がほんのり赤くなるのを見てしまい、失礼だが、不快な感情が込み上げてきてしまった。
私の眉間に微かにシワが寄ったのを見て、彼は慌てたようにノートパソコンのマウスを操作して言葉を付け足す。
「あの、葉王の長野工場からの発注ですが……」
仕事の話ならば仕方ない。
着席したばかりで立ち上がり、彼の隣に立ってノートパソコンの画面を見ながら腰に手を当て話を聞いた。
「それについては処理済みだから大丈夫。
カネポウさんの洗顔フォームの方だけ再検討して。必要なら横山係長に香料の価格推移のデータを出してもらって、担当者に説明を……」
横山くんに比べたら大したことない私だが、それでも後輩に教える立場の主任というポジションには着いている。
淡々と仕事を教えている最中に、「おはよーございまーす」と明るくよく通る声がドアの方から聞こえて、パッと顔を上げた。
来た……横山くんだ……。