モテ系同期と偽装恋愛!?

横山くんを気にしながらも、取引先からのメールに返事を書き込んでいた。

ええと、葉王長野工場、製品部仕入企画課、横山遼介様……あ、違う、草沼様だった。
なんで横山くんの名前を書いてしまうのよ……。

慌てて横山くんの名前を消したとき、左横に彼の気配がして「紗姫」と名前を呼ばれた。

心臓が爆音を響かせる中で、恐る恐る見上げると、ぎこちない笑みを浮かべる彼が私にお土産の箱を差し出した。

その箱とは、パンダチョコの箱で……。

「お土産、ひとつ取って」

「あ、りがとう……」

「ん」

箱に並んだパンダは残り3分の1ほど。

ひとつを摘み上げると、彼はすぐに私の隣の後輩男子の席に移動し、同じように箱を差し出し話しかけていた。

右横に立つ横山くんのスーツの背中を見てから、手の中のパンダを見つめ、「そっか」と心の中で呟いていた。

私も皆んなと同じパンダチョコ。

意地悪な絡み方もされず、ごく普通に皆んなと同じように配られた。

ということは、私と仲良くなりたいという気持ちが、彼の中から消えてなくなったということだろう。

それでいい……横山くんに構われると仮面を外されそうになって困るし、こんな私だから桃ちゃんのように、彼と親しくするのは無理だもの。

これがベストで、こんなふうに接してくれるのを望んでいたはずだった。

それなのに、どうしてだろう……心が痛い……。

手の中のパンダは、普通の茶色チョコとホワイトチョコの2色で出来ている。

白い顔に、耳と目と鼻が茶色のパンダ。

片方の目の茶色のチョコがいびつな楕円で、下方向にはみ出し、まるで泣き顔のように見えてしまった……。

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