モテ系同期と偽装恋愛!?
「もうこんな時間か。ミーティング室、使うか」と、須田係長は立ち上がった。
その時、彼の机の上に置いてあるスマホからバイブ音が聞こえ、飛びつくように手に取るから驚いてしまった。
まるで一大事かのように血相まで変えて、通話に出る声も焦っている。
「来た⁉︎ そうか陣痛がきたか、よっしゃ!
分かった落ち着け、いいか落ち着け、とにかく落ち着け。えーとまず……なにをすればいいんだ⁉︎」
陣痛……? ということは、昨年結婚した奥さんが妊娠中で、初めてのお子さんがこれから産まれるということだろうか。
それは一大事に間違いない。
目の前で奥さんと会話する須田係長を見て、無関係の私まで、どうしようと心の中でうろたえてしまった。
スマホ片手にその場をウロウロし始めた須田係長に、周囲の社員の目も注がれている。
「今、陣痛って言った?」
「ついに出産か。予定日過ぎてると心配してたもんな〜」
「須田さんの奥さん、頑張れー!」
あちこちでそんな雑談が交わされる中、須田係長は通話を終え、スマホを握りしめたまま、島本課長の机に駆け寄った。
「課長、すみませんが早退させて下さい。
出産に立ち会いたいんです。お願いします!」
大きなその声はフロア全体に聞こえ、ライフサイエンス事業部全体がワッと湧く。
まだ産まれてもいないのに拍手が送られ、すっかりお祝いムードだ。