モテ系同期と偽装恋愛!?
島本課長も機嫌よく早退を許可して、昔を懐かしむような目をして言った。
「俺も初めての子のときは慌てちまってな〜。全速力で病院に駆け込んだら、そんなにすぐには産まれないと笑われてな。
初産は時間かかるぞ。俺んところは陣痛から丸一日かかったな」
「そんなにかかるんですか⁉︎
明日から出張なのに……うーん……」
机5つ分離れた場所から、上司ふたりの会話を聞いている私。
初めての出産はそんなに大変なものなのかと未知の分野に触れると共に、なぜか須田係長に対して申し訳ない気持ちになっていた。
出張の日にちをずらすことは出来なくはないが、前日の連絡は失礼で、先方の都合を考えると難しい。
それなら私ひとりで行けばいいのかもしれないが、大得意の大手化学メーカー葉王株式会社の工場に対して、下っ端ひとりを寄越したという印象を持たれたら困ってしまう。
お気の毒だが、やっぱり出産に立ち会えなくても、須田係長に長野まで行ってもらうしかないような……。
離れた位置からそんなことを思っていると、島本課長がパソコンのマウスを動かして何かを調べ始めた様子が見えた。
ここから画面は見えないが、どうやらそれは社員のスケジュール表だったようで、島本課長が「山田は別口の商談で、高村は会議で……」と呟いていた。
須田係長を明日休ませ、代打を探そうとしている様子だが、葉王長野工場に少しでも関係しているメンバーの中で係長クラス以上となると、選択肢は非常に少なかった。