サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~


「ここに、一人で住んでるの?」

家族で住んでるならもっと荷物があるはずだ。
黒っぽい内装といい、全部彼の趣味だろう。

「ああ」

私は、彼の顔をじっと見つめる。

はっきりした顔立ちの男らしい顔。

ずっと黙ってたけど、今までに出会った顔の中で一番格好良くて好きな顔だ。

見ている間は、彼も目をそらしたりしなかった。

お互いに見つめあっていたから。



空になったグラスを彼に渡し、思い切って彼に抱きついた。こんなふうに酔ってないと思いきったことなんてできない。
彼も、好きって態度見せてくれたし、好意的に思ってくれるのは間違いないと思う。こんな風にしても、いいよね?

竜也とは違う、しっかりと引き締まった体。
近くで見ると、なんて整った顔してるの?って思う。

誘惑するなんてどうしていいのか分からないけど、彼の首に腕を回して、こめかみに軽くキスをした。彼の黒い髪に指を絡める。意外と固い髪質なんだと思う。

こんな風にしたいと思ったのは初めてだけど、最初は彼も、逆らわなかった。


酔ってるし、経験も足りてるとは言えないけど、とりあえず試してみよう。

こんないい男に飛びつけるなんて、人生で二度とないかもしれないし。


恋愛映画の女優さんのように、見様見真似で彼の膝の上に乗っかった。彼の頭をつかんで搔きむしるようにしながら、強く唇を押し当てる。

私が覚えてる誘惑の仕方は、ここまでだ。


だって、ここまでしたら男優さんの方が彼女をソファに押し倒したから。

キスをされた彼は、同じようにキスを返してくれはしなかったけど、拒みもしなかった。


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