幸せに・・・なりたい。

**話した事がない


崇は、帰り際に
「綾、きちんと
親父さんと話してみろ。
あの頃の、親父さんとは
ちがうんじゃないか。」
と、言われて
綾は、
「はい。」
と、返事をした。

綾は、小さい頃から
父親から、可愛がられた事も
話した事も、ほとんどなく
成長した。

なにかあるときは、いつも母を介して
父と話すというやり方だ。
まあ、ほとんど、話すことなどなかったが。

綾は、中学、高校と
成績も優秀で、問題なく
成長していた。

高校の二年生の時に
クラスメートが、いじめで悩み
心療内科に通い始めた。
その時、その心療内科の先生が
学校にきて講話をした。

その時に、身体の内部をみて
治療をするのも、大事な医師の仕事
だが、患者さんによりそい、内面を診て
治療するのも、大切な仕事だ。

それが、自分のやっている
心療内科なんだ。
と、話してくれた。

人間の繊細な部分の話や
傷病名の話しに
沢山の病名があることにびっくりした。

内臓が悪ければ、手術をしたり
注射や薬で治ったりする。

心療内科も薬は、調合するが
患者さんに寄り添い
患者の気持ちを少しでも
軽くしたい。

患者さんは、治らなくて
もがいて、苦しんで
でも、他の人には
わかってもらえずに
辛い思いをしているんだ。
と、話してくれて

その時、
心療内科医になりたいと思い、
医者を目指した。

父は、当然政治家になると
思っていたから
珍しく綾の元にきて
怒濤の如く怒鳴りつけた。

だが、俺の考え方は、
変わらず平行線のまま。

父は、高校の先生を呼びつけて
怒鳴りつけたりして
邪魔をしていた。

俺は、力で抑えつけようとする
父親のやり方が嫌いで家をでた。

母が、そうするように
言ってくれた。

医学部に合格すると
学費も早々と支払い、
父親に何も言われないようにしてくれた。

あれから、父親とは
話した事がない。
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