Last Letter~手紙がくれた想い~




「お前も、いろいろ大変なんだな。」


こういうとき、気の利いた言葉でも言えればいんだろう。

でも、俺はそんな格好いい男じゃない。


それにこんな雰囲気の経験なんてしたことなくて、

バカみたいなことしか言えなかった。



『あんたも…苦労してんの??』

俯いたまま、絞り出すような声で村瀬は言う。



「お前ほどじゃないかもしんねぇけどさ。

あ、これ弘斗にしかしてない話なんだから内緒にしろよ。


俺の母親、夜の仕事してんだ。

だから朝方帰って来て、俺とか弟たちが学校から帰ってくる時間に家を出る。


それでな、俺は母親の代わりに弟2人の面倒みてんだ。

料理とか、掃除とか、洗濯とか全部俺がやってさ。


なんか、笑えるだろ?

健全な高校3年、18歳がさ、

小3の双子の弟2人の面倒見て、

親の代わりに家事するなんて。」


あ~ぁと、言って俺はベンチの後ろに手をつく。


俺、やっぱり悠香に逢ってからおかしくなってないか?

こんなこと、弘斗以外に話すつもりなかったのに…



『確かに木村のイメージと違う。

家でずっとギターか勉強してると思ってた。』

村瀬はクスッと笑う。


「笑うなよ」

やっぱり、こんなこと話すべきじゃなかった。


と、後悔した俺だった。






< 53 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop