死神喫茶店
2人は偶然街で会ってから暗くなるこの時間まで一緒にいた。


そっちの方があたしにとっては重要だった。


一体どこで何をしていたのか。


そんな質問が喉まででかかって、あたしはグッと言葉を飲みこんだ。


今は客と店員という立場にある。


余計な事は聞かない方がいいかもしれない。


「ここのコーヒーはいつもうまいな」


留衣があたしの作ったコーヒーで表情を和らげる。


それはとても嬉しい事だったけれど、今のあたしは素直に喜ぶ事もできずに複雑な心境だった。


「本当。とってもおいしい」


夢羽も同じように表情を和らげる。


夢羽は島の中でも少しいい所のお嬢さんで、相当可愛がられて育てられているようだった。


全体的にフワリとした女の子らしい雰囲気をまとい、決して焦ったりしない性格をしている。


それは苦労知らずだからというわけではなく、幼いころからそうなるように育てられてきたからだと、誰もが知っていた。


佐古家に生まれたものは将来大きな財産を継ぐ事になる。


そのための教えや苦労はずっとしてきているのだ。
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