死神喫茶店
「ありがとうございます」


照れながらもそう言うと河田さんが「ライバルに勝つためかな?」と、聞いて来た。


あたしはその質問にグッと押し黙ってしまった。


その通りなんだけれど、せっかく可愛いと言ってもらえていることは素直に喜んでいたかった。


「まぁ……そうですけど」


「青春だね」


河田さんはそう言い、コーヒーを飲んだ。


あたしはカウンター内に入り、エプロンをつけた。


そう言えば河田さんの好きな人の話とか、恋人の話は一切聞いたことがない。


「河田さんは青春していないんですか?」


「俺? 俺はいつまでもしてるよ」


河田さんは目を細めてそう言った。


いつでも青春していると言う事は、口に出さないだけで彼女がいるのかもしれない。


それは少し寂しいような気になったけれど、本気の恋と憧れの区別はちゃんとついている。


「さ、開店するからそこをどけてください。お客さんが入ってこれないじゃないですか」


「客なんてめったに来ないのに」


河田さんはそう言いながらもコーヒーの残ったグラスを手に席を立ったのだった。
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