Love Cocktail
「オーナー……」

「裕だ」

真面目な顔で訂正され、思わず眉を八の字に下げる。

名前で呼べって? 呼ばれたいの?

「ゆ、ゆた……」

口に出そうとして難しい顔をした。

2年も“オーナー”って通してきたのに、そんな急に言われても呼べないから!

「……呼び名くらい、慣れてほしいなぁ」

彼はクスクス笑って、息を吸い込んだ。

「ま、そのうち慣れてくれるかな」

耳元で囁かれて、目をつぶる。

「決めたよ。先は長いしね」

真面目な顔で私の手から小箱を取り上げると、中の指輪を左手の薬指にはめる。

……切り替えが早い。

「だから、早く家族になろう」

ドサッと押し倒されて目を見開いた。

「オ、オーナー?」

ちょ、ちょっと待って、待って!

「風邪治ったなら、もういいよな?」

な、何が!?

布団を剥いで、着ていたTシャツに手をかけられて。

ちょっ……ちょっと?

「待って! ストップストップ!」

「嫌だ。待たない」

「だって。そんな……」

さっきまでのもじもじくんはどこに行ったの?

ひょいとオーナーは、私を見下ろして微笑んだ。

「ごめん。俺は、こっちなら慣れてる」

いや、私は全然、慣れてないから!

「このまま黙ってたら、俺、心臓飛び出しそうだから。お願い」

お、お願いされても……!

「こ、困る……ん?」

心臓飛び出しそう……? それってどっちかっていうと私の台詞のような気がしちゃうんだけど。

もしかして……?

「まさか照れてる?」

「……さぁ?」

抱きしめられて、ポカンとする。

いや、貴方……けっこうスラスラ気障なことを言いますよね?

聞いてるとこっちが赤面しそうなことスラスラと言いますよね?
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