Love Cocktail
「こんなのはかなりの気力が必要だって」

なんの気力だ!? 意味が不明だって!

だけど……。

「もっと普通な照れ方をして!」

「もっと出来ない!」

「してください! 早急に照れ方を学んで! お願いだから!」

オーナーは私を抱きしめたまま、沈黙する。

「……震えてる? もしかして君、未経験なのか?」

どこか驚いたような声で囁かれて硬直した。

そ、そりゃあ。その……付き合ってきた人がいない訳じゃないけど、どちらかと言うかいつも1カ月も持たなかったというか!

たった数週間で、身を捧げるほどの相手ではなかったというか! 

そんな事はどうでもいいじゃ……いや、よくない。

絶対によくない!

「震えてなんていないから! そもそも照れ方を学べって話で……!」

「うん。解った学ぶ」

あさっり肯定されて、少し彼が離れる。

真っ赤になった私と、どこか呆然として驚いている彼。

そして次の瞬間に、満面の笑みを見せられた。

「とても解りやすい反応してくれてありがとう。ちゃんと優しくする。だけど、君も俺を相手にするなら、これくらいの行動は学んで」

「きゃぅ!」

耳を軽く噛まれて、慌てて逃げた。

「にゃ……!」

はにかんだ笑顔にドキドキしてしまう。

いや。それだめ。絶対に反則。

「……俺は君が欲しいって、言ったじゃないか」

「聞いたけど……聞いたんだけど。やっぱりそっちの意味?」

「いや。大丈夫。もちろん身も心も全部欲しいって意味だから」

いや。全然、大丈夫じゃないし!

でも、私にその笑顔……それはずるいんだから! 私は、その笑顔にも弱いんだから!

意図してやってるの? それなら相当なんですけど――!

「待って、待って! 本当に、困る!」

「え。でも、子供は早くほしいよ」

それはあっさりと言う言葉じゃないし!

「そもそもプロポーズに私、返事もしてないけどいいの!?」

「あ。それも困る」

抱き上げられて密着したまま顔を覗き込まれた。

そのまま黙ってじっと人の顔を眺めているけどね……。

「このまま返事すると、とってもいけない事されそうな気がする」

「大丈夫。とってもいい事だから」

とりあえず……。

「あんなプロポーズはノーカウントです」

「マジかー……」

今度はかなりガッカリしている彼に、クスクス笑いながら首に抱き着いてみる。

もしかして、この人の考えていることが私には一番わからないのかもしれない。

そんな事を考えながら……。









2008/01/23 他社サイトにて完結
2016/04/10 加筆修正(根本的に改変はあまりしていません)にて完結。
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