Love Cocktail
着ていた服が入ったカゴを没収され、店員さんに袋詰めを頼みに行ってしまう。

もう、本当に……ずっとこの調子だ。

ぶつぶつ文句を言いながら、さっき買ったばかりのミュールを履いた。

それから鏡を振り返る。

確かに可愛い。秋口に着てもおかしくないんだそうな、そのワンピはとても可愛い。

オーナーに言われるまま着てるから、彼の趣味でもあるんだろうけど……まったく落ち着かない。

とにかく、ムッとした顔は似合わない格好だな。

店員さんに値札を切り取られてる間に、オーナーが白いバックを二つ抱えて来た。

「どっちが好み?」

片方はクラッチバックで、片方はチェーンバック。

「チェーンの方ですかね……」

「オーケー。じゃ、これも。すぐ使いますから」

店員さんに値札を切って貰って、そのバックが私の手に乗せられる。

「オーナぁ?」

さすがに根を上げそうになると、彼は爽やかな笑みを浮かべた。

「その格好に、いくらなんでも布のトートバックはないだろう? しかもドクロマークのプリント……」

「そうかも知れませんが、強引過ぎやしませんか?」

「俺は教授だから。花売り娘は気にしなくていいんだぞ。早く中身を移しておきなさい」

そう言って、また店を探索し始めた。

……楽しそうだ。とてもとても楽しそうだ。

だけど……だけども、これ以上、何も見つけないで下さい!

店員さんに場所を借り、言われるままに鞄の中身を移し替えながら、ちょっとだけ力が抜けて来た。

それにしても古い映画……か。

私もうろ覚えだけど、実家の父が好きで、父が経営するバーでは、BGM代わりにスクリーンに映されてるのを見たことがある。かなり古い映画だ。

下町街角の花を売る娘が、とある教授に言葉遣いから、礼儀作法、立ち振る舞いなどを教わって“貴婦人”に化けさせる事が出来るか賭をする映画。

オーナーの言う通りリメイクされて、名前が違うミュージカル映画もあるし、そっちの方が人気が高い。
最後は恋愛ものだった気がした。

リメイク版では、けっこう教授と花売り娘が結ばれるような感じで終わっているけど。

そのようになれば、ありがたいんですけれどもね。

店を出て、オーナーの車にたくさんになってしまった紙袋を詰め込んだ。

それから運転席に座ると、彼はスマホ取り出してどこかに電話をかけ始める。

「次は礼儀作法かなぁ……」
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