Love Cocktail
まぁ、二十歳も過ぎたら笑って流せばいいや~……なんて、思いましたけど。

「……吉岡も苦労してるんだね」

急に言われて我に返った。

どういう意味だろう。いきなり苦労話になったの?

「……あの」

オーナーはサクサク天麩羅を食べつつ、真剣に頷く。

「その、内面の葛藤を口にする癖も……どうにかした方がいいね」

あ~……。

「私、どこから……口に出してましたかぁ?」

「しょうがないじゃない、辺りからだね」

脱力した。

じゃ、オーナーに言われたくないっていうのはギリギリ聞かれていない。

かろうじてセーフ。

「まぁ、性格を考えると小悪魔と言いたいところだが、それだと見た目が可憐に過ぎる」

可憐とは、初めて言われたかもしれない。

キョトンとしてオーナーを見た。

「可憐で小悪魔……ですか」

「厨房でブツブツと陰惨な悪口を聞いていれば、誰だって“天使”の様な性格だ……とは言わないだろう?」

おお~。

「さすがは年の功ですねぇ」

解っていらっしゃる。

だけどオーナーは、ちらっとお蕎麦から顔を上げ眉を寄せた。

「一応まだ二十八で、何が悲しくておじさん扱いになるんだ?」

「四捨五入です!」私は四捨五入しても二十代ですが、オーナーは三十でしょう?」

「じゃ、隆幸はもうすぐ三十だし、正真正銘のおじさんだね」

……何故、従兄弟さんがでてきますかね。

しみじみした様子に首を傾げた。

「桐生氏が、どうか?」

「誕生日に、秋元さんを家族に紹介するらしい」

ああ、そうですか。

なるほどね……それぞれ、時間は流れているって事ですよね。

しんみり蕎麦を食べ続けるオーナーに、運ばれて来た蕎麦湯をいれる。

つまり、家族に紹介して、そのうち結婚ってことだよね。

いいなぁ。好きな人と結婚かぁ。
うんうん。あの二人なら、お似合いの夫婦になりそうですね。

年上でやんちゃ紳士の桐生氏と、年下なのにしっかりした早苗さん。

逆パターンも有り得そう。
早苗さん、たまに天然ぽいところもあるしね。

でも……。

そう思いながらも、平然を装っている彼を見る。

オーナーにしたら決定的なんだろうな……なんて、考える私も私か。

……合コンに行ってみて、全然楽しくなかった。

結局オーナーと見比べていたんだと思う。
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