恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
「お疲れ。それじゃ」
額を隠す私にツッコミもせず、日下部長は背を向け、あっと言う間に姿を消してしまった。
な、なんという失態……。誰も見てないと思っても、ここは会社だった。自宅じゃない。
次から、気を抜いてちょんまげ残業をするのはやめよう……。
はあと息をつき、USBのデータを自分のパソコンにコピーする。
よし、もうあとは明日にしよう。
くせのついてしまった前髪を無理やりポンパにして、オフィスを出る。
それから会社を出るまで、日下部長に会わないかと思っていたけど、エレベーターの中でもエントランスでも、彼に会うことはなかった。
おお……日下部長と言葉を交わしてしまった。たしかに、近くで見たらよくできた顔だった。今までの人生で会った男性の中で、一番かもしれない。
しかもそんな人に、髪の毛を触られてしまった。厳密に言えば、ちょんまげをつままれただけだけど。
なんだか、変な夢を見ているみたい。
そっかあ……日下部長、会社説明会に来るんだ……。
そうしたらまた、言葉を交わすことがあるだろうか。
他の誰かがいる前で部長と話す自分を想像しながら、帰路につく。
その間じゅう、ふわふわと地に足がついていないような、不思議な感じがした。