恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
「……あるいは、誰も文句が言えない立場の人間か」
「部長?」
「いや、なんでもない」
ぼそりとこぼした言葉を、桑名さんは聞き逃したようだけど、私には聞こえてしまった。
誰も文句が言えない立場の人間……。
それは、この会社で一番立場が上の人間。
つまり、社長が病に伏している今、それは副社長ということになる。
「まさか」
副社長がそんなことをして、いったいどんなメリットがあるというの?
「それに、プライベートな記事って、いったいどんな……」
「それはここでは話せない。桑名、ここを頼む。俺たちは副社長に呼ばれたから、ちょっと出てくる」
「えっ」
桑名さんが了解する前に、一成は私を手招きしてすりガラスルームの扉を開けた。
「副社長室に行ってくる。仕事に関係のない電話は、いっさい取り次がないように。しつこいようだったら、訴えると言ってやれ」
営業部中に響き渡る声でそう言うと、彼は大きな歩幅でずんずんと歩いていく。
慌ててその後についていくと、自分尾デスクに座っている知美と目があった。
彼女はとても心配そうな表情を、その端正な顔に浮かべていた。