恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
「俺はここでいい」
「でも……」
「あの中には専務がいるだろ? うちの叔父が」
そういえば、この人と専務は親戚なんだっけ。
「あの威張りくさったおっさんと、その機嫌を取る人事のおっさんたちを見るとイライラするんだ」
うんざりした顔を見せる部長。
私は思わずふきだしてしまった。
「あはは。同意です」
「は?」
「あ……いえ、忘れてください」
ここで同意しちゃまずかったか。
顔の前で手を振ると、後ろからこちらに歩いてくる足音が聞こえた。
「先輩、そろそろ学生さん集まりはじめてます!」
それは、後輩の田村くんだった。
「あ、はい。今行きます」
「お願いします。俺が専務たちを案内しますから」
田村くんはそう言うと、ちらっと日下部長を見て、ぺこりと会釈をした。
そしてくるりと背を向けると、小走りで控室に戻っていく。
「じゃあ……私、行ってきます」
同じように会釈をし、その場を離れようとすると。
「ちょんまげ」
ぼそりと、低い声が私を呼び留めた。
それはもちろん、日下課長のもので。
思わず足を止めた私に、彼はこう言った。
「負けるな」
一瞬だけ、目があった。
メガネの奥の目が何を言いたいのか、真意はつかみかねた。
けれど、私はうなずいて駆け出す。
どうしてか上司に対するイライラは消えていて、やる気だけが全身にみなぎるような、そんな気がした。