殺人事件と雪ウサギ
 僕はただ口をポカンと開けているしかなかった。

「犯人は捕まっていないわ。
 そもそも捜査もされていないの。
 犯人が、道から離れた場所に死体を運んで捨てたんで、熊やら野犬やらに荒らされちゃってね。
 殺したのも動物だろうって思われて、事故ってことにされちゃったの。
 だからあたしは、遺体の遺棄現場に留まって、犯人が何かの弾みでもう一度現れるのを待ってたの。
 ほら、犯人は現場に帰るって言うじゃない?
 無駄だとは思うけど他に捜しようもないしさ」

 僕は口を閉じた。

 何を言えばいいかわからなかった。
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