殺人事件と雪ウサギ
「こんなところにあったのね!」

 夏憐が僕の肩を掴んで藁の中を覗き込む。

「ご、ごめん……乱暴にしちゃって……」

「ん。いやまあ、驚くわよ、これは普通に」

 犯人の家の鍵を握ったまま息絶えて、犯人に切り落とされて持ち去られた手首。

 指が傷だらけなのは、犯人が鍵を奪い返した跡。

 掌には、キーホルダーに刻まれていたアルファベットが、はんこのように押しつけられて……

 その文字は、今も変色したままだった。

 夏憐がその文字を読み上げた。

 明らかに人の名前だった。
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