殺人事件と雪ウサギ
氷室の出口
 氷室の出口で“あること”に気づいて足を止めて振り返ると、夏憐は氷室の奥に立ったまま、こちらに背を向けて自分の手首を見つめていた。

 僕はここにきて急に、彼女に何て呼びかけたらいいのか迷った。

 木下夏憐。

 頭の中ではずっと夏憐って呼んできたけど、それはただそっちの方がわかりやすいからで、彼女の名前を声に出して呼ぶことは……意識的に避けていた。

 クラスメートになるはずだった女の子。

 男の子からの、女子への呼びかけ。
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