関係が変わるとき
「トモ。トモ。」

また、うわごとを言うユウ。手を強く握ると、それに気づいたようだ。
うっすらと目を開け、「ここ、どこ?」と口を開く。

「ユウ、起きたか?ここは病院だ。お前は会社で倒れて、救急車で運ばれてきたそうだ。」

「トモ、スーツでどうしたの?」

「俺の出先に鈴木部長から電話がかかってきて、そばについていてほしいと言われてここへ来た。
過労だってさ。お前、俺の開発した商品のプロモーションで随分、無理しているんじゃないか。
お前に用があって、広報部を訪ねてもいつもいないし…。」

「忙しかったのは否定しない。だって、トモが手掛けたものを私が宣伝したかったんだもん。」

ユウのこういうところが本当に可愛い。

「点滴が終わったら、もう一度診察だって。」

そう告げると、後ろから「失礼します。」という声が聞こえた。三枝さんだ。

「あらあら、お邪魔だったかしら。」

「いや、別に…。三枝さん、お疲れ様です。俺、ユウの診察が終わったら、診断書をいただいて会社に寄って帰ります。あとよろしくお願いします。」

「本当は私じゃなくて、このまま友行くんの方がいいんじゃないの?」

三枝さんは、俺とユウを茶化すように言った。

「彼氏のいるヤツの家に行って、ゴタゴタに巻き込まれるのは嫌ですしね…。」

「あら、ユウちゃんは今フリーよ。」

三枝さんは意味深に笑った。俺の頭の中にはハテナマークが浮かんだ。写メのあいつとは別れたのか?

「トモも、先輩もいい加減にしてください。私は大丈夫です。」

「大丈夫じゃないから、病院にいるんだろう。」

俺はユウをたしなめた。

「じゃ、俺、会社に戻ります。」

「お疲れ様。」と三枝さんが言うと、「トモ、どうもありがとう。」とユウが続けた。
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