関係が変わるとき

夢と現実のあいだで~side ユウ

私の指にかかる圧力。ぬくもり。
目が覚めると、トモがいた。私の手を握り締めていた。
私は、夢を見ていたことに気づく。
トモが悲しそうな顔で私の元から離れていく夢。
夢の中で「トモ、行かないで。トモ。トモ。」と叫んでいた。

「あれ。」と不思議な気分でいると、私が職場で倒れたこと、
今いるのは病院だということをトモは説明してくれた。
いとおしい人が自分のそばにいてくれるその安心感。
体はふわふわとして変な気分だったけれど、
この状況も嫌いじゃない自分がいた。

珍しくスーツ姿のトモ。彼は仕事柄、白衣を着ていることが多い。
詳しいことはよくわからないけど、出先から急いで私のところに来てくれたんだと思うとうれしかった。

◇◇◇

病院からは一週間の自宅療養の診断書が出たが、
大事なプロモーションがあるため、そう休んでもいられない。
体調も万全とまでいかないけれど、ましになった。
倒れてから2日後、出社した。病み上がりということもあり、
部長は内勤で済むようにし、定時で上がるよう配慮してくださった。

「トモ、この間はいろいろありがとう。もうすっかり元気。」

といいガッツポーズをしてみせた。

「ユウ、あんまり無理すんなよ。俺、心配だから今日はユウを送っていくよ。話もあるし…。送っていくっていっても、俺、電車通勤だから、一緒に歩きながら見張るって感じだけどね。」

「ありがとう。」

この日、私はトモと一緒に帰った。

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