関係が変わるとき
トモがふと、

「ユウ、これから家に帰ってご飯食べるのも面倒だろう?夕飯ごちそうするよ。」

「私、病み上がりだし、そんなに食べたくないからいいよ。」

「まぁ、いいから。いいから。」

トモに連れられてきたのは大衆食堂兼居酒屋みたいなところだった。

「いらっしゃい。兄ちゃん、珍しいな。女の子なんか連れて。」

「おやじさんの雑炊をこいつに食べさせたくて。」

トモとおやじさんは親しいんだなと感じる会話だった。
私たちはカウンターに座った。

「ありがとよ。お嬢ちゃん、この兄ちゃんはいいやつだよ。
おじさんはこの兄ちゃんが大学生の時から知っているけど、
ほんとおススメだね~。お嬢ちゃんはラッキーだよ。」

おやじさんは私に向かってそういった。

「おやじさん、俺のことはいいから、たまご雑炊2つお願いね。」

「あいよ。」

ほどなくして、目の前にたまご雑炊が置かれた。
温かくて、やさしい味だった。体に栄養がじんわりと沁みてくるような気がした。

「おやじさん、こんなにおいしい雑炊はじめてです。」

私の率直な気持ちをおやじさんに伝えた。

「ありがとよ。また、兄ちゃんとおいで。」

「はい。」

トモが夕食を提案してくれて、本当によかったと思った。心も体も栄養補給をした気分だった。

「トモ、いろいろとありがとね。トモが夕食、誘ってくれて正解だった。
こんなにいいお店も知ることができて、明日からまた頑張れそう。」

素直にお礼を伝えた。
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