関係が変わるとき
社長のお言葉に甘えて、俺はユウと熱い夜を過ごした。しばらく会えない分、すべてを覚えておくかのように。

「ユウ、愛している。」

「トモ、私も。」

お互いの名を呼びながら、いつの間にか眠りについた。

翌朝、ユウは俺と一緒に空港に来ていた。ホテルでそのまま別れた方が気が楽だったかもしれない。一緒にいる時間が長くなれば長くなるほど切ない気持ちになる。ユウだって、一分でも一秒でも長く俺といたいと思ってとってくれた行動だ。それがわかるからこそ、ユウが空港までついてくることを止めなかった。

手荷物検査近くのロビーで俺たちは人目もはばからず、抱き合い、キスをした。映画やドラマで観たことのあるシーンをこれまでの俺だったら冷やかに見ていた。今なら、それがどんなに意味のあることなのかわかる気がした。

出発時間がだんだんと近づく。

「トモ、気をつけて。」

「ユウも。じゃあ、いってきます。」

「いってらっしゃい!」

俺たちは努めて明るく振る舞った。
振り返り、ユウの姿を確認しながら、出国審査の方へと向かった。
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