関係が変わるとき

旅立ち

ゴールデンウィークも終わり、あさって俺はアメリカに行かなければならない。年が明けてからめまぐるしくいろんなことがあった。
今日は、会社での出発前の最後の勤務日だ。引き継ぎも終わり、みなさんに挨拶した。廊下でユウと同じ広報部の三枝さんに声をかけられた。

「友行くん、寂しくなるわね~。ユウちゃんのことは任せてね。悪い虫がつかないように見張っておくから。」

「えっ。」

「ユウちゃんはあなたもものなんでしょ?」

どう答えていいか戸惑っていると…。

「お姉さんはごまかせませんよ。」と得意気に言い放った。

「ユウちゃんが倒れたときの友行くん、男の顔をしていたわ。それに最近、ユウちゃん時計を見つめて、『大好きな人と同じ時を刻んでいる』って言ってたわ。それ、友行くんのことでしょ?」

「はい。お姉様、その通りでございます。」

なんでもお見通しの三枝さんにはなんて言ってみようもなかった。こうなったら、頼るしかない。

「俺がいない間、ユウのこと、よろしくお願いします。」

そうお願いした。俺と三枝さんの会話を、たまたま社長も聞いていた。

「やっぱり、君たちくっついたかぁ。もし、アメリカ行きがきっかけだったら、私に感謝してくれよ。声かけたの俺なんだから。」

と社長からも言われ恥かしくなった。そうこうしているうちに俺の回りには、俺も見送ろうとする人だかりができていた。社長の発言で、結局、いまここにいる会社じゅうの人たちに俺たちのことは公認となった。俺がユウに指輪ではなく時計を贈った理由の一つに、周りからからかわれないようにすることもあった。指輪だと目立つからだ。こうとなったら、開き直り、

「みなさん、俺のいない間、婚約者のユウのことよろしくお願いします。」と言った。

そばで聞いていたユウは真っ赤になった。

「もう、トモはこれからアメリカだからいいけど、ここに残る私は毎日みんなから冷やかされる~。」

周りでみんなは笑っていた。みんなの笑顔で見送られるというのもいいものだ。

「私のせいで、みんなに知れ渡ったなぁ。お詫びに小林さん、今日は早く帰っていいよ。二人で一緒に過ごしなさい。」

社長は粋なはからいをしてくれた。

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