手に入れる女

玄関のチャイムの音がして、佐藤が立っているのを見た時、優香はさして驚かなかった。

「入っていい?」

それだけ言うと優香の返事を待たずに佐藤は中に入ってきた。

「いきなりどうしたの。」

佐藤を招き入れながら優香は聞いた。それは、優香らしくなく冷淡な口調だった。

「ん…、ケータイの番号とか全部削除しちゃったから、君に会うにはここに来るしかないと思って。」

カウチに座りながら説明した。佐藤は言い訳みたいな説明だと思った。
ふっと息をついて、部屋を眺める。

「相変わらず奇麗にしてるね、全然散らかってない。」

それだけ言うと無言になった。なかなか話を切り出す事ができない。

「なーに、部屋をチェックしにわざわざ来たの?」

優香は少しおどけたような顔をして、佐藤の返事を待った。優香の方から、話を向ける気はないらしい。
どうしようかしばらく考えあぐねている様子だったが、優香が黙って佐藤を促しているので、ついに観念したように自分の手に視線を落として白状した。

「心臓が止まるかと思った、この前君たちを見たとき。いつから知ってたの?」

「うーん、だいぶ前かな。」
 
佐藤は苦笑いをするしかなかった。

「君の方がずっと上手だったってわけだ。素知らぬ顔して僕や圭太と会ってたってことか。」

「まあね。」

優香は余裕たっぷりの返事をした。

< 185 / 216 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop