ピーク・エンド・ラバーズ
知るか、流れとかそんなの。
あからさまに照れられると、こっちの方が恥ずかしくなる。
「ずるくないし」
「あ、ちょ……待って」
タイミングよく青に変わった信号に、これ幸い、と歩き出す。
津山くんが焦ったように横に並んできて、それから。
「繋ぎたい」
触れた腕と伝う指。おずおずと近付く距離にもどかしくなった。
きっと津山くんは、この先も強引に手を引くことなんてないんだろう。でもそれは、私が彼に気持ちを伝えるのを、怠っていたからだ。
「……うん」
繋がれるのを、触れられるのを待っているだけじゃなくて。繋ぎたい、触れたい、その意思があるなら、ちゃんと自分からも勇気を出していかなきゃいけない。
いいよ、と言うのも上から目線だし、私も、と言うのは照れ臭かった。その代わりに彼の手を握って、ゆっくりと頷く。
ワンテンポ遅れて私の手を握り返した津山くんの目尻が、泣いてしまいそうなくらい、優しく綻んだ。
本当に、津山くんは時々意味が分からないし、大袈裟だ。
これくらいで弱らないで欲しい。でも、これ以上はまだ心の準備ができていないから、待っていて欲しい。
一人胸中で考えていたのは結局そんな自分勝手なことで、だけれど、彼を嫌いになりたかった時と比べたら、私は少しだけ利他的になれたような気がした。