ピーク・エンド・ラバーズ


怖いものが苦手。カッコ悪い。それでいいよ。
少なくとも私は、津山くんがダサくなったところでどうだっていいんだよ。


「西本さ――」

「あ、いたー! お待たせ!」


もう日が落ちたというのに、朱南は元気いっぱいなようだった。その声に応じようとして、そういえば津山くんに呼ばれた気がしたな、と振り返る。


「なに?」

「あ、いや……何でもない」


ありがとう、と。そう付け足して照れ臭そうに俯いた彼に、こっちが恥ずかしくなってしまった。

みんなでホテルまでの道を歩きながら、秋の風を顔に受ける。
アトラクションの感想を興奮した様子で交換する灯たちの後ろで、私と津山くんはなぜか二人並んで歩いていた。まあ私たちだけ乗っていないし、話に加われないのだから、当たり前といえば当たり前だ。


「西本さん」


不意に名前を呼ばれて、彼の方に視線を移す。返事の代わりに首を傾げれば、「何でもない」と言われてしまった。

そのまま特に会話もないまま歩き続けて、時々、事故のように僅かに手が触れて。だからといって、重なることはない。私たちは、そんな関係ではない。

でも外が薄暗くて良かったな、と思った。
手を繋いでいた時のことを思い出して、ほんの少し、顔が熱かったから。

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