ピーク・エンド・ラバーズ


わざとらしく語尾を伸ばして、さっきの彼の口調を揶揄う。


「もっとかっこ悪くなっても、誰も文句言わないと思うよ」

「……は、」


まあこれは、八割くらい私の願望だけど。
カッコつけたいというのがプライドなら、それはどうしようもないし、ご自由にどうぞ、という話で。だけれど、それが彼自身を窮屈にしているのなら、もう少し他人の目に鈍感になっても罰は当たらない気がするのだ。


「人って意外と自分のことしか見てないらしいよ。他の人のことはね、次の日には忘れてるもんらしいし」


人気者の津山くん。遊び人の津山くん。それ以外の感情を知らないみたいにへらへら笑って、気を遣って消耗して。
疲れないのかなって、時々思う。私みたいに、愛想を振りまく相手を取捨選択すればいいのにって、思う。とはいえ、彼にとってのアイデンティティーとプライドがそこにあるなら、譲れないし変えたくないのだろう。

津山くんにとっては、いきなり何の話だ、とさっぱり意味が分からないかもしれない。でも、一つだけ覚えていて欲しいのだ。
カッコいい津山くんより、カッコ悪い津山くんの方が、何倍も人間味があって面白いということ。


「だから私も、津山くんがこんな風になってるの明日には忘れてるなあ。ってね」

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