お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
「どこか行きたい所ある?」

 

笑ってしまった私に、1つコホンと咳払いして優しく微笑みながら尋ねた藤丸さんに、私はふと思ったことを口にすることにした。

 

「行きたいっていうか…。あ、あの藤丸さんにお願いがあるんです」

 

「何?」

私を見つめる藤丸さんの視線はどこまでも優しくて、私の言葉を後押ししてくれる。

 

 

「眼鏡、外そうかなって思って。それで、あの。コンタクトにしようと思って」

 

それは、今日一日考えていたこと。

 

藤丸さんに「かわいい」と褒めてもらったことがなんだかとても嬉しかったから。

それでも、30歳も過ぎてコンタクトデビューなんて勇気が出なくて。

 

でも、もし藤丸さんが一緒に着いてきてくれるなら。

 

 

私の言葉を静かに聞いていた藤丸さんの表情が、ぱぁっと晴れ渡っていくのが分かる。

 

< 112 / 291 >

この作品をシェア

pagetop