お見合い結婚~イケメン社長と婚前同居、始めます~
ビルを出てからどのくらい経ったのだろう。

夕暮れの都心は、徐々にスーツ姿のサラリーマンがあちこちのビルから出てくるのが目につく。

私がこうやっている間に、携帯の着信を告げる音楽が数回鳴った。
相手は藤丸さん。


きっと、先に帰ったことを怒っているんだろうな。




「赤井さんがもし、渉さんのこと恋愛対象じゃないのでしたら私に渉さんをください。そして一日でも早く渉さんの前から消えてください。渉さんの想いが強くなる前に」

ふと、梶原さんに言われたことが頭の中に浮かんでくる。その後には私の背中に浴びせられた桐谷課長の叫び。

そもそも住む世界が違う。
あんなに可愛い人から好意を寄せられていて、私なんて不倫していた地味女。

梶原さんの言うとおり、ゲームなんて終わりにしなきゃ。



それなのに、終わりたくないと強く思うと目頭が熱くなるのは何なのだろう。

梶原さんと並んだ姿を想像するだけで、胸がえぐられるような気がするのは何なのだろう。
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