クールな王子の、甘い毒


*


「はぁ……」


私、有原凪紗(ありはらなぎさ)、誰もいない教室で本日何度目かわからないため息をつきながら、目の前の課題に目を落とす。


春休み明け最初の物理小テストで、最悪な点数を叩き出した私に待っていたのは、


「有原、大野、野田、渡部おまえら今日残ってこの分厚い課題を終わらせろ〜終わるまで帰れんからなぁ」


昼休みに鬼の物理教師、鎌田(かまだ)に怒られ、サッカー部のおバカトリオと放課後居残りで課題をやるという地獄だった。


物理は1年生の頃から大の苦手で、2年生になり文系にしたはずが、なぜかうちの学校のカリキュラムで物理基礎をやらなければならず、この散々な結果を残してしまった。

しかも、

「自分が悪いんでしょ。私今日は彼氏と予定あるから。せいぜい頑張って〜」


親友の並木蘭(なみきらん)には裏切られ、


「有原すまん!俺ら今日は部活行かなきゃ監督に怒られるから、色んな手を使って終わらせた!すまんな!」


トリオはそう言い残して、嵐のように去っていった。


そして、いま居残り1時間半が経過しているがわからなすぎてほぼノータッチである。


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