その男、猛獣につき


「あぁ。3食は厨房に取りに行けば、もらえるように手配してある。風呂は、夜に浴室を使っていい。布団はこのADL室の物を使用してもらって構わない。金曜がリネン交換日だから、その日は朝から3階の不潔倉庫まで布団一式持っていくように。それから、荷物は日中は布団と一緒に押し入れに入れ…」

 

「やっぱり、寮に住んじゃだめなんですか?」



先生がここでの生活を説明 するのに口を挟んだせいで、先生はまた私を冷たく睨む。

 



「寮に住みたいなら、住んでいい。でも、」

 

「でも?」

 

「もう何年も畳替えもしていない。先住人はダニとGといったところだ」

 

「G?」

私が不思議そうに尋ねたのが可笑しかったのか、少しだけ口角をあげてニヤリと笑った先生は、私にそっと耳打ちをした。

 

「ご、ごき…」

その黒いシルエットを思い浮かべるだけで、全身に鳥肌をたてた私は、渋々ながらこのリハビリ室に8週間お世話になることにした。

 
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