その男、猛獣につき

「あつっ！！」

午前中の業務中、ホットパックを素手で触るという凡ミスから始まり、医事課に請求した消毒液の個数を間違えるという先生にはありえないミスを連発。

 

看護師長とカンファレンス中に揉めたらしいし、医事課には電話でコピー機のトナー交換を急げとクレームを入れていた。

 

そういえば、竹内さんには牽引療法の角度が微妙に違うと怒っていたっけ。

 



★☆★

「有田、レポートフィードバックするぞ。」

片づけも終わる頃になって、スタッフルームから顔を覗かせた先生が私に声をかける。

低くて、色気のある声。

その声だって、醸し出している雰囲気だって今日は一段と機嫌が悪いことが明らかに分かる。

 

「ほらほら、ここは私たちで片付けておくから。行きなさい。」

「今日は早く行った方が身のためよ」

 

おばちゃん２人は私に囁く。

 

「ありがとうございます」

私はそう言って、先生の下へ急いだ。