その男、猛獣につき

「あら、今日は仲良しね、お二人さん」

「昨日、あんなに荒れていたのに、何かあったの?興梠先生」

 

興梠先生と私の様子を朝のミーティングのためスタッフルームに入ってきた竹内さんと嶋本さんに冷やかされる。

「ほら、言っただろう。」

先生は面倒くさそうに呟いたけれど、瞳の奥はいたずらな少年のようにキラキラしていて、私はその顔に惹きつけられずにはいられない。

 

先生の顔を見ていると、やはり昨日のキスを思い出してしまう。

 

あのキスは、何だったの?

「忘れろ」って言われたって、あんなことされたら忘れるどころじゃなくて、ますます意識してしまう。

 

先生の柔らかな唇の感触が鮮明に思い出されて、私はそっと指先で唇に触れる。

鼓動は、隣に立つ先生に聞こえてしまうんじゃないかと心配になる程、大きく鼓動している。

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