その男、猛獣につき
先生は、私の一言に何かを考えるようにひとつだけため息をつくと、口を開いた。
「こうやって、実習中に恋愛とかで惑わされたくなくて、しげちゃんには毎回実習生は男子学生でって頼んでいたのに…」
私はもううつむくしかない。
私の想い、やっぱり迷惑ですよね。
「いつもバイザーしていても、学生のことを冷静に見て評価も指導もできるのに、今回ばかりは、自分でも驚くほどどうしていいかわからない」
垂らしていた手の指の背が、かすかに先生の指の背と触れる。
「有田の評価表を記入しながら、その評価が自分の感情のせいで甘いんじゃないかと思ってみたり、逆に厳しすぎるんじゃないかと思ってみたり…」
「指導だって同じで。車イスバスケも、業務後の指導だって、実習の一貫とプライベートの境界線が自分の中で分からなくなることがあって……」