その男、猛獣につき

そうだよね。

先生が心配したのは、私ではなくて、先生が担当しているあくまで実習生である私。

 

それでも、どこかで期待してしまうのは、いけないことなのでしょうか?

 

そんな思いが、次から次へと浮かんでは消えていく。

 

「先生が心配してくれたってことだけで、私は嬉しいです」

 

言いながら、胸が締め付けられる。

 

どんなに願っても、これ以上は踏み込めない、踏み込んじゃいけない。

バイザーと実習生なんだから。

 

いつの間にか先生と私は、ADL室に隣同士に並んで、壁を背もたれにして、体育座りして喋っている。

 

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