その男、猛獣につき


大丈夫、と言い切ったくせに、案の定ギブアップした有田から無理やりテーブルを奪って、課長と元の場所へ運び込む。


「ありがとうございます」
有田が軽く頭を下げたのに、あぁ、なんて呟いて朝礼の始まるスタッフルームに戻ろうと足を進めようとした。




「あのっ、興梠先生!!!」

有田の声とともに、服の裾を小さく掴まれた。



「おぉい、朝礼始めるぞぉ」
スタッフルームから課長の声が響く。


その声に反応したように他のスタッフは、移動を始めたものだから、リハビリ室には俺と有田の二人きりになる。



「どうした?」

そんなつもりはないのに、そっけなく発してしまった言葉に有田は少し身を潜め、意を決したように笑顔を作って見せる。

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